3月3日は桃の節句(雛祭り)

ももの節句にはいろいろな食べ物を食べてお祝いをします。

〇菱餅

蓬の緑・菱の実の白・くちなしの赤い餅を重ねてあり、厄除け・清浄・厄病除けの効果で、健やかな成長を願うものです。

〇雛あられ

関西風は餅を砕いて揚げたあられですが、関東風は米粒をあぶったものが原形で、倹約の心を表しています。中部圏は関東風に近いような? 調べてみます

〇白酒

本来は桃の花びらを浮かべた「桃花酒」で、百歳(ももとせ)を願いました、江戸時代には白酒ができてこちらが定着しました。

〇はまぐり

はまぐりは対の貝殻しか合わないため、相性の良い相手と結ばれて仲睦まじく過ごせるよう願います。潮汁にしていただきます。

〇ちらし寿し

長寿祈願の海老、見通しのいい人生を願うれんこん、健康勤勉を願う豆など、縁起の良い山海の幸を彩り良く酢飯の上にちらします。

これらの食ぺものが定番ですが、最近でではケーキなどのひな祭りスィーツも食べてお祝をしています。

クリスマスや誕生日など記念日にはスィーツは定番ですね

もともと3月3日や5月5日とか節句と呼ばれる日はあまり良い日ではなかった

そもそも「節句」とは季節の変わり目の「忌み日」に行事を行う習慣のことです。

また中国から伝来したものです。中国では春節(2月初旬の旧正月)、清明節(4月初旬のお盆)、端午節(6月初旬の屈原追悼供養)、中秋節(9月初旬のお月見)の4大節句がにぎやかに執り行われています。

日本と中国では節句の持つ意味がかなり違います。共に本来は「忌み日」という縁起がよくない日に祭りを行うという趣旨ですが、中国は時季を重要視するのに対し、日本は日付けそのもの、数字が重要な意味を持っていました。この日にちに意味を持たせるのは今でも頻繁に行われており、語呂合わせの読み方なのが次から次に記念日として登録されてもうよくわからない状態ですね (笑)

中国の節句はその時季に行うお祭りという感覚であるのに対し、日本の節句は縁起が悪い日を恐れ、悪いことが起きませんように穢れを祓うための日でした。特に立春の前日の節分は鬼退治のため豆まきをしたれ柊鰯を飾ったりしていますね。

日本で節句と呼ばれているものは、人日(1月7日)、上巳(3月3日)、端午(5月5日)、七夕(7月7日)、重陽(9月9日)の5つです。ひな祭りの3月3日や、端午の節句の5月5日、七夕まで縁起が悪い日と言うと意外に思われるかもしれないが、陰陽五行では奇数を陽数、偶数を陰数といい、陽数が重なる日、つまり奇数が連なる日を忌み日としてきています。

残念ながら 人日(1月7日)、重陽(9月9日)は他に比べてあまり知られてないようですね?

3月3日、5月5日、7月7日、9月9日は特別な忌み日とされ、そこに日本の呪術的要素が加わり、穢れを祓うための節句として定着したようです。

現在、中国には上巳の節句に相当するものは存在しないようですが、古代の中国には3月3日(上巳の日)に水辺で禊をするという風習が存在したので、それが日本に伝わったのではないかと考えられるています。

ひな祭りの本質は穢れ祓いの行事であったため、祭りにつきものの雛人形、白酒、菱餅、そして桃の花は、それぞれに穢れ祓いのための重要な役割を持っています。雛人形は穢れを背負わす身代わりの形代であり、白酒と菱餅は身代わりになってくれる人形への報酬です。。

桃の花はと言うと、ちょうどシーズンでたくさん咲いていたから、ではなくやはり大切な意味を持っています。といっても花ではなく枝に意味があります。

中国に「山海経」という奇書があります。これは紀元前300年代から200年代にかけて加筆完成された古代中国の地理書です。様々な地域の動植物、鉱物、産物などを記していますが、その中には空想上のものも多く、神仙や妖怪といった神話なども含まれています。

妖怪・神話というとなんかハロウィン発祥のケルト文化や日本の大和神話を想像しませんか?

この書の中では、鬼を退治する最強アイテムとして登場するのが桃の枝です。

後漢時代の学者である王允が書いた「論衝」という書物の中の一説に、「山海経」を引用した部分があり、そこに「東海の度索山という地に、大なる桃の三千里に渡って曲がりくねる樹があり、その低い枝が東北に向かうを鬼門という。この所(鬼門)は諸々の鬼の出入りする所で、神荼(しんと)・鬱塁(うつるい)という二神がいて、悪鬼を捉えて虎の餌にする。黄帝はこれに習って、桃の枝を門戸にさして、神荼・鬱塁の二神を描いて諸々の凶鬼を塞ぐ。」と書かれています。

桃の枝はかなりの魔除け効果があるとされていたようです。ちなみに日本にもこの「桃の枝を門戸にさして、神荼・鬱塁の二神を描いて諸々の凶鬼を塞ぐ」に似た習俗がありますね。

節分に行われる「柊イワシ」と呼ばれるものです。これは、柊の葉のついた枝に焼いたイワシの頭を刺して、戸口に飾って鬼の侵入を防ぐ呪術である。

桃で鬼退治をする話から桃太郎が生まれ、北東方向が鬼門として定着したので、山海経が日本に与えた影響はとてつもなく大きなものでしょう。上巳の節句の時期に咲き誇る桃の花が、呪力を期待されて節句の花として採用されたのもうなずける。

桃の枝だけでなく実にも魔除け効果が、種は女性の漢方薬として珍重

桃は4月上旬頃に花が咲き、夏頃に実をつける。イザナギの尊が変わり果てた妻から逃げたのは夏頃だったようである

桃の魔除け効果に関しては日本の神話にも登場している。古事記に書かれている伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冊尊(いざなみのみこと)の話である。

伊弉諾尊と伊弉冊尊は夫婦神であったが、伊弉冊尊が死んで黄泉醜女と言う化け物に変わってしまった。怒り追いかけてくる化け物から逃れるため、伊弉諾尊が桃の実を投げたところ、化け物は恐れ動けなくなり、その隙に無事逃げ切ることができたと言う話が記されている。桃の魔除け効果は枝だけでなく実にもあると考えられていたことがわかる。

桃の実については中国にも神聖視する考え方があり、西遊記の中に、孫悟空が天界の蟠桃園で不老不死になる桃の実を全部食べてしまい、騒動となって逃げ出す下りが書かれている。蟠桃とは桃の品種のひとつで、天界の至宝である太上老君の金丹と同列なほどの宝として扱われている。

西遊記は元の時代(1271~1368)頃に完成したとされる小説であるが、すでに宋の時代(960~1279)にはその原型である「大唐三蔵取經詩話」という説話が存在していた。伝奇小説という形をとってはいるが、当時の人々の信仰を集めた道教の影響を色濃く示しており、その登場人物たちにも道教的な色彩が強く出ていて興味深い。

また桃の種は昔から漢方薬として重宝されていた。宋の時代に書かれた中国の「傷寒論」という医学書にも、桃仁(桃の堅い核の中にある種)は婦人薬の材料として記されている。現在も、桃仁を使った桃核承気湯という漢方薬があり、女性の血流をよくする薬として知られている。

桃だけじゃない!チマキや笹の葉も魔除け効果がある節句のアイテム

このような穢れ祓い、魔除けのアイテムは他の節句にも存在し、端午の節句ではチマキや菖蒲の葉、七夕では笹の葉、重陽では菊花などがある。

チマキは餅を千萱(ちがや)の葉で巻いたのが始まりで、千萱はスサノオお勧めの魔除けグッズである。菖蒲と笹の葉はその形から剣を意味している。剣は古来より魔を打ち災厄を祓うものと考えられてきた。中でも最強の武器は、天皇家に伝わる三種の神器の天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)である。千萱の魔除け効果については、「なぜ夏越の祓で茅の輪潜りをするのか?蛇神の形代を使う摩訶不思議な神事の秘密」でご紹介しているので興味がある方はご覧いただければと思う。

菊花が魔除けの効果があるとされた出典は道教の「神仙説話」にある。それによると、後漢の時、汝南(じょなん)というところに住んでいた桓景という若者が、疫病神を退治しようと費長房(ひちょうぼう)という仙人に教えを請い、茱萸(ぐみ)の葉と菊花酒をもらい、その葉を身に付けて菊酒を飲むことで疫病神を追い払い、村人を助けたと記されている。

このように、桃以外にも様々な植物に魔除け効果があるとされてきた。中でも桃は花が咲き、実を結び庭木にも良いため、戦国時代にも城の中に桃を植える大名が多く存在した。ただし自宅の庭に植える際には虫がつきやすいので注意が必要だ。

桃は、穢れ祓いによし、鬼退治によし、女性向けの漢方薬としてよし、もちろん美しい花を愛でてよし、さらに虫がつかないように大事に育てる必要があるなど、まさに女の子の節句にぴったりのアイテムと言えるだろう。

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